2010年6月29日火曜日

吉村順三記念ギャラリー

わざわざそのためだけに行かないけど、時間が合えば必ず立ち寄る場所のひとつ、東京・目白の吉村順三記念ギャラリーに行ってきました。今回は、家内が東京に住む妹に会うということで、僕は運転手。妹さんのアパートについてからは、「どっか行ってていいよ」というので。。。
この吉村順三記念ギャラリーですが、「小さな建築展」として、毎回ひとつの作品を取り上げて、図面や模型などが展示されます。吉村事務所のOBの方などが中心になってやっているらしく、運がいいとその作品を担当した人がいたりして、直接話を聞くことができたりします。
今回は22回目の展覧会で、「御蔵山の家」です。この「御蔵山の家」は、1966年に竣工してから2回増築されて、今も大事に住まわれているということです。設計期間に2年以上かかってるらしく、さまざまなプランが検討されたことが展示からもわかります。中にはトイレが部屋の真ん中にあったりして、これはないだろうというようなプランもあるのですが、最終形がやっぱ一番しっくりとしているように思いました。最後の最後で東西を反転したりして、プランが決定しているなど、最後の最後まで検討が繰り返されている様子が伝わってきます。少しでも部屋を広くするための厚さ24ミリの合板だけの間仕切り(配線とかできません)や、仕上げ材料などからは徹底してコストを抑える工夫が読み取れるのですが、一方では、床暖房や暖炉があるなど、豊かな生活をおくるための追求がされています。この暖炉だって、躯体と一緒に打ってるので(躯体費に含まれてしまい)暖炉自体の値段はわからないなど、低コストで実現されていると思われます。いろいろな工夫が詰まった図面に見入っていると、「これが正解だと思っちゃダメですよ。こういうこともできるんだ、くらいに考えたほうがいいかと思います」なんていう解説があったりして、とても勉強になります。確かに、雨漏りや断熱のことを考えると、ついつい安全側、というか結果として過剰になってしまうのですが、「これでいいんだ。これでもいける」という感覚はなかなか身につかないなー、がんばろう、という気持ちになりました。
ところで、そんなに予算的に厳しいのになんでRCにしたのだろうかという疑問がわきます。会場の人に聞いてみたところ、「RCを木造のコストでやってみよう」という吉村順三の一言からRC造になったとかで、お施主様は、木造ともRCとも希望はとくに言わなかったということです。木造であればコスト的にはもう少し楽なはずなのに、そういったチャレンジングなところが吉村順三らしいような気がします。

2010年6月22日火曜日

やっと着工


東京の某公衆浴場ですが、昨年の11月に実施設計が完了したものの、施工者の選定に時間がかかったり、確認申請に時間がかかったりで、先日予定より2ヶ月遅れでやっと着工しました。21日は試験杭に立会い。試験杭というのは、たいてい1本目の杭で行うことが多いのですが、この現場も1本目の杭でした。この日は、ほぼボーリング調査どおりの支持層が確認され、地中障害物等もなく順調に進みました。この現場の場合、場所打ちコンクリート杭といって、アースドリルで穴を掘って、鉄筋を組みコンクリートを流し込むというやり方ですが、1日に1本くらいしかできないそうです。
それにしても、1日外にいると疲れますね。朝8時半に現場に着くためには、6時23分の新幹線に乗らなければならず、夕方にはもうふらふらでした。現場の人はこれから暑い季節なのでたいへんです。竣工は年明けですが、順調に進むことを祈るばかりです。

2010年5月25日火曜日

ティンバライズ建築展

青山のスパイラルで行われている「ティンバライズ建築展」(5月30日まで)に行ってきました。開催場所がスパイラルということもあってかたくさんの人が来ていました。建築の展覧会で、しかも「都市における木造建築の可能性」といったような比較的地味な(そう感じたのは僕だけ?)テーマなのでこの人の多さは意外でした。
展覧会の内容は、木造で耐火構造を実現するための方法(木造耐火部材のモックアップ展示など)といった基本的なことから、表参道を中心とした具体的な場所に、さまざまなビルディングタイプの木造建築物の提案まであり、とても充実した展示内容だと思います。柱・梁の木造ラーメンだけでなく、木造の折板構造や二重螺旋構造など、さまざまな構造なども提案されています。
さて、都市において木造建築を実現させるとなると、一番難しいのが耐火ということだろうと思います。都市部ではそのほとんどが準防火地域や防火地域となるため、建物の規模にもよりますが耐火建築物にすることが求められることがほとんどです。近年、地方の学校施設や福祉施設などでは木造建築物とすることが多くなってきていますが(ちなみに、長岡幼稚園は「燃え代設計」による準耐火です)、都市部でやるとなると格段にハードルが高くなり、防火地域で木造なんて最初から検討しないのが普通ではないでしょうか。しかし、今回の展覧会を見て、これからは木造も選択肢のひとつになってきそうだなと感じました。
木造は身近なようで身近でない。大規模や高層(といっても5階程度)、耐火ということになると一般的な方法では解決できないことが多いのです。鉄やコンクリートと同じように工学的な視点での技術開発が進むことは大変重要だと思います。
これに関連して、木造ということで言えば、「公共建築物木材利用促進法」が5月19日に可決されるなど、国としても木造でできるものはできるだけ木造でつくりましょうという方針が出されており(主に3階建てくらいまでの低層の公共建築物を想定しているようです)、今後具体的な木造建築への支援策などが出てくれば、地方公共団体や民間にも広まっていくような気がします。

はじめてのワイハー



アローハー。前回更新してから半年以上経ってしまいました。昨年の暮れから年度末にかけてやや忙しく、なかなか更新できませんでした。
なぜ、ハワイでもあるまいし、アローハー。と言ったのか。それはハワイに行ってきたから。「あっちこっち行ったけど、ハワイが一番いいねー」なんていう人にこれまで何人も会ったことがありますが、行ったことがない僕は「ふーん」と言うしかありませんでした。しかし、これからは「やっぱ、ハワイはいいわー」なんて言うこともできます。言わないけどね。でもまた行きたいと思いました。
さて、今回の旅行ですが、新婚旅行を兼ねるというか、ずばり新婚旅行なんですが、それと、6ヶ月になる娘も連れて行くということで、子連れでも大丈夫そうな場所はということでハワイになりました。同じホテルに5泊して、のんびりしようかという計画です。
旅行の楽しみといえば食事もそのひとつですが、おいしい食事にはあまりありつけませんでした。食事はダウンタウンのベトナム料理が一番おいしくて、しかも安かったです。でも、なぜかお酒類を置いてなくて、「飲みたきゃそこらで買ってきやがれ」と店主らしき人が言うので、近くのセブンイレブンまで行ったのですが、「身分証明書を見せてくれないと売れません」ということで売ってもらえませんでした。「ホワイ? ア、ア、アイアム、サーティシックスイヤーズオールド」って言ってもだめ。後で聞いたら、20代に見える人には一応身分証明書の提示を求めるというのがこの街のルールのようです。ビールが飲めなくて悲しかったのですが、20代に見られたということはうれしいような気もします。
その他、カヤックに乗ったり、ドライブしたり、一日買物地獄だったり、マウイ島でサトウキビ列車に乗ったり、ハレアカラ火山でパワーをもらったり、「ハワイの風気持ちいいねー」なんて言ってみたりと、意外に忙しく、ビーチでビールを飲みながら読みかけの村上春樹『1Q84 Book3』を読むなんてことはできませんでした(帰ってきてから読み終えたけど、そんなに売れる本か?って感じもしました。とくにBook3は話がなかなか展開しない。やっぱ、僕もそうですが、村上春樹はとりあえず買う、みたいな人が日本には100万人以上いるということでしょうか)。ハワイははじめてだし、ビーチでのんびりなんてわけにもいかず、あちこち行きたくなってしまいます。でも、次にハワイに行くときは、もう少しのんびりしたいと思いました。

2009年10月25日日曜日

名は体を表すといって

私事ですが、というか、このブログタイトルも「石橋剛の断続的日録」から「石橋剛の公私混同月録」にこっそり変更したので問題ないのですが、子供が生まれます。
そこで名前を考えなくてはいけないのですが、名は体を表すというように、名前によってその子がこれから歩む長い人生の大半が決まると言っても過言ではない。とても重要な問題です。それほど大切な問題であるから、古来より専門家に頼んで名付けをしてもらったりということが行われてきたのですが、最近ではインターネット上に候補となっている名前を入力するとその名前の子供がどのような人生を歩むか教えてくれるサイトがたくさんあります。便利です。ただです。これを使わない手はありません。当然、複数のサイトでチェックするというダブルチェック、トリプルチェクも簡単に出来ます。イエイ。
ところが、脳みそをしぼり、床を転がりながらやっとのことで考え出した名前を、これはどうだろうと入力して、「占う」というボタンをぽちっ通すと、「この名前を持った子は、一生呪われるでしょう」などという結果が出るのです。そして、再度脳みそを振り絞ってふんふんいいながら考えた名前を入力するのですが、何度やっても「悪い男にだまされ続けます」「借金で首が回らなくなります」という良くない結果が続きます。まあ、名は体を表すということが本当に正しいのかどうか、「ふとし」という名前なのに痩せている人や「細子」というのに太っている人などがいるように、「一生幸せになります」という名前を付けたからといって、本当にそうなるかはわかりません。でももうすぐ生まれちゃうし、2週間以内に出生届を提出しなければならないので時間もあまりありません。
一字違うと大変なことになるということに関連して、出産後に備えて「乳頭マッサージ」について調べようと思ったところ、一字違いで「乳首マッサージと」入力してしまい、とんでもない検索結果が表示されてしまうという経験をした人を僕は知っています。子供の名前も慎重に決めなければ。というわけで、考えは千々に乱れまとまらず、名前はまだ決まりません。

2009年10月4日日曜日

パンダ号 オーバーヒート



故郷の伊豆に戻ってきたときに友人から譲り受け、これまでずっと一緒だったパンダ号が到頭壊れました。うえー。これまでにも、オイルがすぐ無くなるとか、雨漏りがするといった不具合はあったのですが、エンジンが止まるといった致命的な故障は無く、5月には車検も通したばかりでした。
ところが、先週の月曜日のこと。いつも通り三島の自宅から事務所までパンダ号を走らせていたのですが、なんだか変です。どうしたんだろうか、アクセルを踏んでもスピードが上がりません。うげー、水温計に目をやると振り切れているではありませんか。そういえばなんだかオイルの焦げたようなにおいがするし、そうこうするうちにボンネットから煙が出てくるし。あわわ、やばいやばい、とあわてて車を止めて、修理屋さんに連絡。ということに相成った訳です。
ラジエーターに水を送っているポンプが壊れて水がだだ漏れになっており、タイミングベルトとポンプを交換する必要があるということです。「7万円くらいかかっちゃうけど、バラしてみてエンジンまでダメだともっとかかっちゃうね。これから他にも故障がどんどん出てきそうだしお勧めできないけどね」ということでした。
エコカー補助金があるうちに廃車にして新しい車を買ったろ。というたくらみがパンダ号の機嫌を損ねたとしか思えません。ごめんよー、パンダ号。あ、写真は先月の伊豆合宿でも活躍のパンダ号です。

Revit Architecture 導入

AutodeskのRevit Architectureというソフトを買いました。今までCADはJW_CADというフリーのソフトを使っていたのですが、他のCADソフトもそうですが、基本的には製図板の代わりにコンピュータで図面を描くというものです。データのやり取りや修正が紙図面よりも便利であり、今ではほとんどの設計事務所がCADを使っています。コンピュータを使った設計ということではRevitも同じですが、RevitはBIM(Building Information Modeling)といって、ひとつの建物モデルを作っておいてそこから必要な情報(平面図、立面図、パースなど)を取り出すというやり方で設計するソフトです。Autodeskが時々開催しているハンズオントレーニングに参加して実際にRevitに触れてみて、「これは画期的なソフトだ」と思ったのと、キャンペーン期間中で安く買えるということもあって(それでも40万円以上しました)思い切って導入しました。ひとつの建物モデルから図面を作成するので、図面の不整合ということが無くなるということであり、仕上表や建具表といった図面も連動するということなので、設計が進んでからの変更などもこれまでより簡単に対応できるようになるということです。
BIMを実現するソフトはRevitの他にもありますが、僕はRevitしか触ってないので、どれがいいかというのはわかりません。Revitだって買ったばかりで使うのはこれからで、実際のところはどこまで使えるのかはわかりません。
今後使っていくにあたって一番気になっていることはデータのやり取りのことです。Revitで実施設計まで出来るということですが、いきなり全てをマスターできるわけもなく、最初は現在使っているJW_CADも使わないといけないでしょう。また、協力事務所などにデータを渡すときに変換がうまくいくかどうかということも心配です。JW_CADどうしでも設定が異なれば出力したときの線の太さなどが変わってしまうのですが、Revit形式をJW_CADにするにはどうしたらいいのでしょう。Autodeskの製品なのでDWGには書き出せるはずなので、それをさらに変換してということになると思います。
まあ、とりあえずは使い方を練習して、半年くらいで覚えてしまいたいですね。CADソフトが変わったからといって、出来上がるもののデザインが良くなるのかどうかはわかりませんが、これまで図面の整合性をチェックするのに割いていた時間が無くなることなどで、デザインの検討にかけられる時間が増え、結果として最終成果物のクオリティが上がればと考えています。それと、このソフト、パースやウォークスルームービーなども簡単に作れるようなので、お客さんに対してもっとわかりやすい説明ができるようになるのではと期待しています。逆に注意しないといけないのは、「こういう形はRevitだと描きにくいから」というように、ソフトに縛られないようにしないといけないですね。