2011年3月29日火曜日

建築家・松村正恒ともうひとつのモダニズム

東陽町のギャラリーA4で開催中の「八幡浜市立日土小学校と松村正恒展—木造モダニズムの可能性」を見てきました。本当は25日に予定されていた花田佳明さんと青木淳さんの講演も楽しみにしていたけど今回の大震災のためか中止ということで残念。タイトルの通り松村正恒の代表作である日土小学校に焦点が当てられています。日土小学校は2009年に改修工事が終わり保存再生工事が完成し新たな小学校として生まれ変わったということです。展示では、教室に入ったかのような感覚になる大きく引き延ばした写真や映像(明るい元気な子どもたちが駆け回っている)によって、今も日土小学校が大切に使われていることが伝わってきて感動的です。やはり建物は使われてこそ生き続けるのだということを改めて思いました。
そもそもこの展覧会をぜひ見に行こうと思ったのは、最近出版された花田佳明『建築家・松村正恒ともうひとつのモダニズム』(鹿島出版会)がとても面白かったからです。600ページ以上の分厚い本で読み出すまでに時間がかかりますが、読み出すと長編小説を読むようにすらすら進んでいけます。松村正恒という人は日本における最初のドコモモ20選の人というくらいの認識でしたが、こんなすごい人だったとは、というのが率直な感想です。モダニズム建築なんだけど、建物の自由にのびのびとした感じは本のタイトルにある「もうひとつのモダニズム」という言葉に集約されているように思いました。松村のひたすら理想の公共建築(学校や病院)を追い求める姿や、建築家としての倫理観など、地方の設計事務所で働く者としても勇気づけられます。
そういえば、こないだ、岡田湯の設備の営業さんと世間話の中でその人の出身地が八幡浜だという話になり、「日土小学校という有名な小学校がありますね」と言ったら驚いてました。日土小学校は夏休みなどに見学会もやってるようなのでぜひとも一度行ってみたいです。

2011年3月24日木曜日

岡田湯竣工

ロビー

浴室


浴室

こちらも長岡幼稚園と同様、2年前に実家の事務所に入ってから本格的に設計が始まり、長岡幼稚園と同時並行的に設計監理を行ってきました。こちらは、話をもらったのはかれこれ5〜6年前のことであり、その間のいろいろなことも断片的に思い出され感慨深いものがあります。計画自体も二転三転し、確認申請でもかなり変更を余儀なくされ、大変苦労して設計しました。
オーナーさんには「東京一かっこいい銭湯になったよ。東京一ということは日本一だよ」と言ってもらえたので、こちらも合格点といって良いのではないかと思います。オーナーさんの希望でしたが、浴室にロフトがあるような銭湯なんて他にないと思います(法的にはかなり苦労しました)。露天風呂も緑いっぱいで気持ちがいいと思います。まだ少し手直し等ありますが、最後までがんばろう。
長岡幼稚園とは違って、施工者と現場所長にははっきり言って苦労しました。すべてが自分の都合で動くと思っているのか、自分以外の立場・状況が想像できないのか、これまでもいろいろな現場所長さんがいましたが、これは初めて。施工者選定のときからかなり大変な現場になるだろうことは予想されましたが、、。そんなやり方では良い建物できないよ、TY建設さん(いちおうイニシャル)。それとも、役所指導による是正対応などを施工者に助けてもらうということ自体が甘い考えなのか。役所は「図面では読み取れなかった」などと平気で言うし。それに、施工者の提案を受け入れた部分だってかなりあると思うのだけど。まあ、今回、設計事務所の責任とかリスク管理ということではかなり経験値アップだと思いますが。
銭湯なので450円で入れます(ドライサウナはプラス200円)。風呂上りにはエビスビールもジョッキで飲めます。足立区にお住まいの方はぜひ一度行ってみてください。足立区在住の読者はいないか。3月26日オープンです。
天気の都合で外観写真はまだですが、内観写真を少しだけ。ホームページのほうにも改めてアップします。

長岡幼稚園竣工

南側外観

保育室

ホール

設計からだと2年弱、2年前に実家の事務所で働き始めて間もなく、プロポで運良く勝てた物件であり、思い入れの強い建物です。県産材の杉による集成材を使った木造としたこと、天窓によって採光と通風をコントロールし空調等に頼らなくても快適な環境となることを目指したこと、ヒノキフローリングや珪藻土など子どもたちに優しい自然素材を多く使っていることなどの特徴があります。設計が始まった頃は、県産材とか木造なんてことはあまり言われていませんでしたが、今は国も県も木造を推進しようとしています。政治的に木造じゃなきゃだめと言われるのも設計者の自由度が下がるような気がして違和感がありますが、幼稚園という用途では木造がいいと思います。出来上がってみると反省点もたくさんあり、今後に活かしていかなければという思いも強く持ちました。しかし、建物を見た人の評判はよく、いまのところ合格点はもらえているのではないかと考えております。
今回は工期が無くて大変な現場だったと思いますが、施工のクオリティは高いと思います。良い施工者良い現場代理人に恵まれたと思います。良い建物を造るんだという気持ちが伝わってくるような現場所長さんでした。私たち設計者は図面を描くだけで、出来上がる建物のクオリティは施工する人の経験や技術力に大きく左右されてしまうというのが現実でもあります。極端な話、出来上がる建物が良いものになるかどうかは運まかせということになりますが、設計者としてそれでいいのかということは悩ましいです。今回は運が良かったということか。
来年度の園庭整備が残ってますが、園舎のほうは4月から使われ始めます。子どもたちが元気良く遊び回って、生き生きと使われることを願っています。ホームページのほうにも改めてアップしますが、写真を数枚載せておきます。