2012年7月25日水曜日

省エネ建築診断士


12~13日で、パッシブハウス・ジャパン主催の省エネ建築診断士セミナーに参加してきました。住宅の省エネ性能を判断するための知識を習得するというもの。講習の後に試験があって、それに合格すると「省エネ建築診断士」の資格がもらえます。資格がほしいというわけではなくて、省エネ住宅の考え方を学びたくて参加しました。昨日試験結果の発表があり、私も無事合格していました。よかった。講師の森みわ先生、松尾和也先生とも、とても分かりやすい講義だったし、それよりなにより省エネ住宅に懸ける情熱と信念のようなものが静かに伝わってくる感動的な講義でした。懇親会に参加できなかったのが悔やまれます。
何を勉強したか。自分が設計する建物の省エネ性能がどのくらいのものなのかということを判断するための基礎知識を勉強しました。最近では、建物が使うエネルギーを計算してくれるソフト(「建もの燃費ナビ」など)も出ていますが、どういう計算をしているのかという基本的な知識は身に付けている必要があると思います。以下、まとまってませんが、今回勉強したことと、省エネ住宅に関して普段から考えていること。
一般的な住宅の場合だと、ざっとですが、使うエネルギー(一次エネルギー)の3分の1が給湯、3分の1が暖房、3分の1が家電などと言われています。夏は冷房にたくさん使ってるイメージがありますが、冷房は10%くらいと言われています。これを減らすにはどうしたらいいか。まずは、建物の断熱性能を上げることです。次に、自然の力をうまく利用することです。冬には南からの太陽光を入れ部屋を暖めるとか、夏場は日射を遮り風通しを良くして冷房に頼る日を減らすとか、太陽熱で温めたお湯をお風呂に使うとか、そういった工夫が大切です。
断熱性能が上がるともちろん光熱費が下がるのですが、それにも増して快適性が向上します。これは、今までは冷たかった壁(いくら部屋を暖めても底冷えする感覚はこのせいです)が、断熱性能が上がることで室温に近くなり、同じ室温でも体感温度がだいぶ上がります。今までは8畳くらいの狭い部屋だけを暖めて、脱衣室やトイレは寒いといった生活スタイルだったのが、エアコン1台で家全体が温かい、しかも光熱費は前より安くなった、というようなイメージです。
断熱性能アップは、新築でなくてもリフォームでも可能です。というより、これからはリフォームでも積極的に考えていく必要があると思います。「建もの燃費ナビ」というソフトを使うと(もちろん新築でも使えるソフトですが)、今住んでる家の断熱性能がどのくらいで、こうこうこういう断熱改修をすればこのくらいの性能アップが見込めます、ということが簡単にシミュレーションできます。さらには、年間の光熱費がどのくらい変化するかということもある程度正確にシミュレーションできます。今住んでる家の温熱環境シミュレーションくらいなら、営業的にサービスでやってもいいかもしれません。頼んでくれる人がいればの話だけどね。
2日間とても充実した内容でした。日本全体で使う一次エネルギーの内、4割くらいは建物(住宅やオフィスなど)で使っています。私たち設計者は、建物が使うエネルギーを減らせるような設計をする責任がある、と改めて考える2日間でした。

2012年6月25日月曜日

「地域文化財専門家」育成研修(1)

久しぶりの投稿です。
23日は、静岡県建築士会主催の「「地域文化財専門家」を育成する研修」というのに参加してきました。テキストによれば、「地域に埋もれた文化的価値のある歴史的建造物を発掘し、その価値を判定するとともに、その建造物の保全・活用に関し、市町村や建築所有者から相談を受けたり、場合によっては、改修などについて提案することができる専門家」とあります。文化財というと少し敷居が高いようなイメージがありますが、この専門家は、地域に残る身近で文化的価値のある建物をもっと活用することで、地域の個性を活かしたまちづくりをしていくためのアドバイスができる建築の専門家という感じでしょうか。最近関わり始めた地元地域のまちづくり勉強会などでも役立ちそうです。
この講習会、全部で7回の講習があり、宿題なんかもあったりして結構大変なんですが、楽しんでやっていけそうです。最初の宿題は、自分が住んでいる地域で眠っている文化財建造物・建築物(と自分が思うもの)を探すというものです。3件以上。すぐには思い当たらないのでこれからあちこち出かけてみようと思います。
さて、その日は、講習会が終わって、懇親会に参加したい気持ちをぐっと抑えて(よっぽどのことがない限り懇親会とか交流会というものを欠席することはないのですが)、大学時代の研究室のOB/OG会にダッシュ(でも少し遅刻)。そこで、千葉工大准教授のY崎先輩から、「石橋は、建築士会でやってるヘリテージマネージャーの講習会とかは出たりしてないの?」と聞かれびっくり。上に書いた通り、静岡の場合は「地域文化財専門家」という名称ですが、もともとこのような専門家育成を始めたのは兵庫県が最初で、兵庫県では「ヘリテージマネージャー」という名称らしいです。ジャストタイミングだったのでびっくりでした。その他、知らぬ間に結婚してた人や、離婚してた人、就職が決まった人、いつまでも僕の製図板を借りたままの人など、あともちろん先生とも、いろいろとお話ができて楽しいひとときでした。

2011年6月1日水曜日

講演会「松村正恒の思想」を聞いてきた

岡田湯も竣工し東京に行く機会がめっきり減ってしまい、東京出張のついでに展覧会や講演会などに行く機会も減ってしまった。時間と交通費を使ってわざわざ出かけるとなると億劫になったりするのだけど、でもこの講演会は行ってよかった。
『建築家・松村正恒ともうひとつのモダニズム』の花田佳明さんと、青木淳さん(東大で花田さんと同級生だとか)による講演会。『建築家・松村正恒ともうひとつのモダニズム』を読んでいたこともあり、花田さんの話は理解しやすかった。青木さんは、改修後の日土小学校を見学したときに撮った写真をスライドで見せながら、日土小学校の特徴について解説(?)してくれるというもの。これが大変面白かった。青木淳という建築家はこういうところが気になってしょうがないんだ、こういう見方をしてるんだ、ということが新鮮だった。「基本真壁なんだけど、縦横のラインを強調して空間の抽象性を“表現”するようなことをしていない」とか、「金物の使い方など、金物をかっこよく見せようとするわけでもなく、隠そうとするわけでもない」とか、「ジョイント部分は普通は、ジョイントをかっこよく見せるか、ジョイントがないように見せるかどちらかだけど、日土はどちらでもない」とか、「ごく普通に見えるようなディテールで全体ができている」とか、「部品と部品を分けるでもなく、その間があるわけでもなく」などなど。そのようなディテールが、あの空間の雰囲気のようなものをつくっているのではということだった。
帰りの新幹線でもいろいろなことを考えたのだけど、ひとつ、青木さんは自身の作品ではわざと「普通じゃない納まり」をやるんだろうけど、松村の場合はどこまで「わざと」と言えるのか?ということが疑問に思った。「表現しない」ために、やりっぱなしみたいなディテールでよしとするのは、松村がどこまで意図していたことなのだろうか? 日土小学校には、すっきりとしたモダニズム建築らしい納まりもあれば、明らかにへんなところもある。浮いたように見せてる下足入や図書室の棚など、すごくデザインがうまい人なのは間違いないので、「へんな納まり」になってるところが、施工の技術レベルの問題なのか、力を抜いた設計なのか、あえて「へんに」見せようとしたのか、気になるところ。花田さんの結論のひとつにも「建築の意味が確定することを拒否したこと」とあるが、そのために色を使ったり、銀紙を張ったりしたのではないか、ということであったが、意図しないでやってるディテールも結構あるように感じられた。たぶん、いろいろなレベルで混ざってるのだろう。僕の経験上では、一生懸命考えた納まりだけど「これどうやって作るんすかぁ?絶対壊れますよぉ」なんて現場監督に言われて、泣く泣く変更したりすることはあるけど、そういうレベルとは違うと思うし。普通に見えるところでも、かなり気を使って設計しているという場合もあるし。まあ、とにかく、これは一度見に行かないといけないと改めて思いました。8月7日に見学会があるようですが、珍しく予定が入ってるしなー、次の春休みシーズンに見学会があればいいけど。

2011年5月1日日曜日

家庭菜園



昨年越してきた今の家の庭には畑があります。冬の間は放置されていたんですが、春になって暖かくなってきたので、夏野菜を中心に植えてみました。イタリアンパセリやルッコラといった少しおしゃれな感じのする野菜や、枝豆やオクラやトマトなどです。まだまだスペースがあるので、今度はズッキーニやパプリカなども植えてみたいと考えてます。
庭から野菜を採ってきてサラダを作ったり、ピザに乗せて焼いたりといった、田舎の優雅な休日ライフを思い描いて始めたのですが、収穫までには長い道のりがあるのであって、鍬で耕したり草取りをしたりするのは結構大変です。いやいや、努力なくして成功なし。毎朝出掛けに畑の様子をチェックして水をやったりするのがいまのところ日課となっています。

2011年3月29日火曜日

建築家・松村正恒ともうひとつのモダニズム

東陽町のギャラリーA4で開催中の「八幡浜市立日土小学校と松村正恒展—木造モダニズムの可能性」を見てきました。本当は25日に予定されていた花田佳明さんと青木淳さんの講演も楽しみにしていたけど今回の大震災のためか中止ということで残念。タイトルの通り松村正恒の代表作である日土小学校に焦点が当てられています。日土小学校は2009年に改修工事が終わり保存再生工事が完成し新たな小学校として生まれ変わったということです。展示では、教室に入ったかのような感覚になる大きく引き延ばした写真や映像(明るい元気な子どもたちが駆け回っている)によって、今も日土小学校が大切に使われていることが伝わってきて感動的です。やはり建物は使われてこそ生き続けるのだということを改めて思いました。
そもそもこの展覧会をぜひ見に行こうと思ったのは、最近出版された花田佳明『建築家・松村正恒ともうひとつのモダニズム』(鹿島出版会)がとても面白かったからです。600ページ以上の分厚い本で読み出すまでに時間がかかりますが、読み出すと長編小説を読むようにすらすら進んでいけます。松村正恒という人は日本における最初のドコモモ20選の人というくらいの認識でしたが、こんなすごい人だったとは、というのが率直な感想です。モダニズム建築なんだけど、建物の自由にのびのびとした感じは本のタイトルにある「もうひとつのモダニズム」という言葉に集約されているように思いました。松村のひたすら理想の公共建築(学校や病院)を追い求める姿や、建築家としての倫理観など、地方の設計事務所で働く者としても勇気づけられます。
そういえば、こないだ、岡田湯の設備の営業さんと世間話の中でその人の出身地が八幡浜だという話になり、「日土小学校という有名な小学校がありますね」と言ったら驚いてました。日土小学校は夏休みなどに見学会もやってるようなのでぜひとも一度行ってみたいです。

2011年3月24日木曜日

岡田湯竣工

ロビー

浴室


浴室

こちらも長岡幼稚園と同様、2年前に実家の事務所に入ってから本格的に設計が始まり、長岡幼稚園と同時並行的に設計監理を行ってきました。こちらは、話をもらったのはかれこれ5〜6年前のことであり、その間のいろいろなことも断片的に思い出され感慨深いものがあります。計画自体も二転三転し、確認申請でもかなり変更を余儀なくされ、大変苦労して設計しました。
オーナーさんには「東京一かっこいい銭湯になったよ。東京一ということは日本一だよ」と言ってもらえたので、こちらも合格点といって良いのではないかと思います。オーナーさんの希望でしたが、浴室にロフトがあるような銭湯なんて他にないと思います(法的にはかなり苦労しました)。露天風呂も緑いっぱいで気持ちがいいと思います。まだ少し手直し等ありますが、最後までがんばろう。
長岡幼稚園とは違って、施工者と現場所長にははっきり言って苦労しました。すべてが自分の都合で動くと思っているのか、自分以外の立場・状況が想像できないのか、これまでもいろいろな現場所長さんがいましたが、これは初めて。施工者選定のときからかなり大変な現場になるだろうことは予想されましたが、、。そんなやり方では良い建物できないよ、TY建設さん(いちおうイニシャル)。それとも、役所指導による是正対応などを施工者に助けてもらうということ自体が甘い考えなのか。役所は「図面では読み取れなかった」などと平気で言うし。それに、施工者の提案を受け入れた部分だってかなりあると思うのだけど。まあ、今回、設計事務所の責任とかリスク管理ということではかなり経験値アップだと思いますが。
銭湯なので450円で入れます(ドライサウナはプラス200円)。風呂上りにはエビスビールもジョッキで飲めます。足立区にお住まいの方はぜひ一度行ってみてください。足立区在住の読者はいないか。3月26日オープンです。
天気の都合で外観写真はまだですが、内観写真を少しだけ。ホームページのほうにも改めてアップします。

長岡幼稚園竣工

南側外観

保育室

ホール

設計からだと2年弱、2年前に実家の事務所で働き始めて間もなく、プロポで運良く勝てた物件であり、思い入れの強い建物です。県産材の杉による集成材を使った木造としたこと、天窓によって採光と通風をコントロールし空調等に頼らなくても快適な環境となることを目指したこと、ヒノキフローリングや珪藻土など子どもたちに優しい自然素材を多く使っていることなどの特徴があります。設計が始まった頃は、県産材とか木造なんてことはあまり言われていませんでしたが、今は国も県も木造を推進しようとしています。政治的に木造じゃなきゃだめと言われるのも設計者の自由度が下がるような気がして違和感がありますが、幼稚園という用途では木造がいいと思います。出来上がってみると反省点もたくさんあり、今後に活かしていかなければという思いも強く持ちました。しかし、建物を見た人の評判はよく、いまのところ合格点はもらえているのではないかと考えております。
今回は工期が無くて大変な現場だったと思いますが、施工のクオリティは高いと思います。良い施工者良い現場代理人に恵まれたと思います。良い建物を造るんだという気持ちが伝わってくるような現場所長さんでした。私たち設計者は図面を描くだけで、出来上がる建物のクオリティは施工する人の経験や技術力に大きく左右されてしまうというのが現実でもあります。極端な話、出来上がる建物が良いものになるかどうかは運まかせということになりますが、設計者としてそれでいいのかということは悩ましいです。今回は運が良かったということか。
来年度の園庭整備が残ってますが、園舎のほうは4月から使われ始めます。子どもたちが元気良く遊び回って、生き生きと使われることを願っています。ホームページのほうにも改めてアップしますが、写真を数枚載せておきます。